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社長コラム

【第1話】良い酒造り:風土が個性生み出す

6月下旬、日本酒の海外輸出セミナーに出席した。講師は著名なソムリエであり、また権威ある世界的ワインコンテストの日本酒部門で審査員も務める大橋健一氏。内容を一言で言えば「蔵元よ、技術でなく風土を語れ」であった。紙幅の許す範囲で披露したい。

 
まず「良い酒を生み出す条件」から考えてみよう。清澄(せいちょう)な水、上質な酒米、杜氏(とうじ)の技、最新鋭の設備などがあげられる。蔵元からの説明もこのような内容が中心だ。しかし、「これではいけない」と主張する大橋氏。なぜか?
 
酒の輸出が順調に増加し世界中で日本酒が消費される時代を想定してみよう。中国で酒が売れるようになれば中国人実業家が中国での清酒の生産を始めるだろう。最高級の日本酒を作るための条件が、先に上げた米や水、杜氏の技術、最新設備とするなら、金さえかければ、中国でもすべて入手可能だ。有能な杜氏も破格の条件でスカウトできる。米も水も日本から調達すればよい。中国人事業家は最高品質の日本酒を堂々と主張し、国産清酒と市場を奪い合う競争相手として名乗りを上げる。
 
その時、日本の蔵元は何をもって国産清酒の優位性を訴えていけばよいのだろう。その答えが「風土」である。米や水、技術は確かに大事だが、歴史の中で最適化されたそれらの複雑な組み合わせこそが良い酒を生むという考え方だ。日本は地域ごとに気候、水質、地質や気質に至るまで多様な個性があり、それが個性的な酒を生んでいる。
 
教科書的に酒造りに最適な条件だけが良いとは言えない。むしろ、悪条件と言える環境から際立った個性をもった酒が生み出されることもある。短所は長所でもある。個性のある酒なら市場でも確固とした立ち位置を確保できる。「技術でなく風土を語れ」という理由はそこにある。弊社の立地する信州伊那も二つのアルプス連峰に挟まれた酒米の宝庫だ。それを生み出す風土について深く学び、酒造りにいかしていきたいと強く感じた講習会であった。

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