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社長コラム

【第10話】酒粕:副産物の価値高めて

今夏の日照不足により稲の作柄の良否が心配されているが、縞瓜の不作も酒造業界に影響がある。縞瓜が不作だと漬物用の酒粕(かす)が売れないのだ。今回は酒粕について紹介したい。   酒粕には漬物用の夏粕(練り粕)と、粕汁などに使われる冬粕(板粕)がある。酒造期間は主に11月から3月。米と米麹(こうじ)、酵母を仕込んでから約3週間の発酵期間を経て上槽(しぼる)する。ここで透明な液体(酒)と板状の固体(酒粕)に分けられる。酒粕を板状のまま流通させれば冬粕になる。一方、冬粕をタンク等の容器に詰め込んで(踏込み)、7月まで貯蔵し、柔らかくなったものを袋に入れて販売するのが夏粕だ。   弊社では夏粕が主流で、冬粕はその5%程度しか出荷してこなかったが、それには二つの理由がある。夏粕がよく売れたことと、冬粕の時期は酒造りの最盛期のため袋詰めに人員を割けないことだ。   長期的に見ると、冬粕市場の方が見通しは明るい。今夏のように、夏粕は縞瓜など野菜の作柄や出荷量、販売価格の影響を受ける“相場商品”のため、売れ残るリスクがある。また、日本人は野菜を漬物という伝統的な手法で保存食にしてきたが、若い世代はそこまでしない。このため漬物需要は減少が予想されるためだ。これらを踏まえ、当社としては今後、夏粕から冬粕に重点をシフトすべきと考えている。 酒粕は栄養価と機能性に優れた食材で、3年ほど前、NHKの報道を機にブームとなったが、その主成分は米麹であることはあまり知られていない。日本酒の仕込み配合は、通常は米8、米麹2だが、酒粕になるのは主に2割の米麹である。つまり麹は米を溶かして酒にする液化・糖化酵素を作るのが役割だが自らは溶けないのだ。   酒粕は名の通り日本酒製造の副産物であり、利用しなければ産業廃棄物となる。他方、その価値を見出し、必要とされる時期に必要とされる形で供給できれば富を生む宝の山だ。酒粕の他、精米時に出る米粉や米ぬかなども清酒の副産物だが、知恵と技術で価値あるものに生まれ変わる可能性がある。   「人の行く裏に道あり花の山」。人が気付かないものに価値を見出すことのできるセンスを身につけたいと思う。

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