【第4話】海外市場の開拓:鍵はパートナー選び
11月に香港で開催されたワインの国際見本市に参加した。日本貿易振興機構(JETRO)の支援を受けて多くの酒蔵が日本酒ブースを出展した。この模様を紹介したい。
香港に限らず、酒の輸出事業の成否は、現地での販売を委託するパートナー選びにかかっている。展示会はその出会いの場だ。今回も3日間で30以上の企業と商談をした。必ず聞かれたのが、「香港に販売代理店があるか」「うちを専属代理店にしてくれないか」というものだ。質問者の多くはワインや食品の卸業者で日本酒の取り扱いを増やしていきたいと言う。蔵元からすると結構な話だが、「専属」というのがくせ者だ。他業者に卸さない独占契約にしてほしいのだ。狭い香港市場で価格競争を避けたいのだろうが、こちらも簡単にそんな約束はできない。独占契約をしてしまえば、結果が出なくても、他に販売網を広げることができなくなるからだ。
今回、私は渡航前に日本の得意先からある香港人事業家を紹介されていた。彼に会ってみると、日本酒に対する情熱、冷凍肉類の流通で築いた顧客基盤、そして冷蔵流通のネットワークをもつ有望な会社だと感じた。弊社にとって本命といっていい。しかし、ここと販売契約を結べばよいかというとそう単純ではない。この業者には他の蔵元も期待を寄せているため取扱銘柄が多いのだ。実際、本人も取扱い銘柄の数を絞り込む必要を感じているようだった。
弊社ブランドを重要銘柄として扱う確証のない相手に独占販売権を与えるのは一つの賭けでもある。迷った末、本命であるこの会社と一年間付き合う方針を決めた。結果がどうでるかは未知数だが、一歩前進だと考えている。
見本市に出展していた他の酒蔵から学ぶことも多かった。輸出事業への着手を機に、新たに中国語を学び始め、今回立派に中国語でスピーチしたA社長、中国語学留学の経験を買われて1歳の子供を日本に残して出張してきたB蔵の総務担当の女性の姿勢には感銘を受けた。こうした努力の積み重ねによって、いつの日か日本酒の海外市場が大きく花開くだろう。自分もその一翼を担いたいと考えている。